忘れていた真実

田中健太は二十五歳になったばかりの会社員だった。毎日同じ電車に乗り、同じオフィスで同じ仕事を繰り返す日々。周りの人々も同じように見えた。みんな何かに追われるように生きている。
「これが人生なのか」と彼は思った。大学を卒業し、就職し、いずれ結婚して家庭を築く。そんな当たり前のレールの上を走っている自分に、ふと疑問を感じ始めていた。
真実を見ようとするか、見まいとするか
ある雨の夜、健太は偶然古い書店で一冊の本を手に取った。哲学書だった。ページをめくると、こんな言葉が目に飛び込んできた。
「真実を知れば、人は変わる。問題は、真実を見ようとするか、見まいとするかだ」
健太の心に何かが響いた。これまで自分は真実から目を逸らしていたのではないか。本当の自分、本当にやりたいこと、本当に大切なもの。それらすべてから逃げていたのではないか。

忘れていただけ
翌日から、健太は自分自身と向き合い始めた。子供の頃の夢を思い出した。小学生の時、彼は絵を描くことが大好きだった。中学生の時は、困っている人を助けることに喜びを感じていた。高校生の時は、人の心の動きに興味を持っていた。
「そうだった」と健太は思った。「僕は人を幸せにしたかったんだ。人の心に寄り添いたかったんだ」
真実はすでに彼の中にあった。ただ、社会の期待や周囲の目を気にして、忘れていただけだった。
自分の役割が見えてくる
真実を思い出した健太は、自分の役割が見えてきた。彼は心理カウンセラーになることを決意した。人の心の痛みに寄り添い、その人が本来持っている力を引き出したい。それが彼の使命だと感じた。
会社を辞めることは簡単ではなかった。周りからは「安定を捨てるなんて」と言われた。でも、健太にはもう迷いはなかった。
誕生の理由
夜間の大学院に通いながら、健太は多くの人と出会った。同じように人生の転機を迎えた人たち、自分の道を見つけようとしている人たち。
「僕が生まれた理由は、人と人とを繋ぐことだったんだ」
生まれた理由は、外側にあるのではない。内側に必ずある。それは誰かに教えてもらうものではない。自分自身の心の奥深くに、最初からあったのだ。
反省と感謝
三年後、健太は心理カウンセラーとして独立した。小さなオフィスだったが、多くの人が彼の元を訪れた。彼らの話を聞きながら、健太はいつも思っていた。
「すべての人が、それぞれの真実を持っている。すべての人が、それぞれの役割を持っている」

健太は、自分のもとを訪れるすべての人に感謝した。そして、自分がこの道を歩むことに深い感謝を感じていた。真実を思い出させてくれた人々、支えてくれた人々、そして何より、真実を見る勇気を与えてくれた人生そのものに。
真実を知れば、人は変わる。 真実はすでに知っている。忘れているだけに過ぎない。 真実を思い出したら、自分の役割が見えてくる。 生まれた理由は、内側に必ずある。
~ 終 ~
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